ネットワークスペシャリストとは?
博士、ネットワークスペシャリストって何?
ネットワークスペシャリストとは、簡単に言えば超難しいITパスポートみたいなものじゃ。
レベル4の高度試験に当てはまる国家資格じゃ。
資格名 | レベル | 開催時期 | 費用 |
ITパスポート | 1 | 年中 | 7500円 |
基本情報 | 2 | 春・秋 | 7500円 |
応用情報 | 3 | 春・秋 | 7500円 |
ネットワークスペシャリスト | 4 | 秋 | 7500円 |
何だか難しそうだけど、どれくらいの勉強時間で取れるの?
一般的には知識がない状態から始めると200時間はかかると言われておる。
ただ、ワシは応用情報取得しつつ実務でもネットワークに関わっていたが、
120時間は勉強していたぞ。
に、にひゃく…
そもそもどんな問題が出て、どんな勉強すればいいのかな?
よし。じゃあその辺りを解説していくぞ。
問題形式
そもそもネットワークスペシャリストは午前試験・午後試験に分かれておる。
午前は4択で、午後は記述じゃ。記述と言っても論述ではないぞ。
最長でも70文字程度じゃ。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) | 10:50~11:30 (40分) | 12:30~14:00 (90分) | 14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) | 多肢選択式 (四肢択一) | 記述式 | 記述式 |
出題数 解答数 | 出題数:30問 解答数:30問 | 出題数:25問 解答数:25問 | 出題数:3問 解答数:2問 | 出題数:2問 解答数:1問 |
かなり長丁場なんだね…
午後Ⅱが2時間もあるのに1問しか解かなくていいんだ!
その分難しそうだね…
そうじゃ。全部の区分で60%を取らないといけないので、
午後がどちらも100点でも午前が50点だと不合格になってしまう。
なので、勉強するとしたらまずは午前の対策からじゃな。
当たり前すぎる。
午前Ⅰ・午前Ⅱの概要・勉強法
概要について
午前Ⅰは応用情報の試験範囲から出題され、午前Ⅱはネットワークにより密接した問題が出題されます。
午前Ⅰは範囲が広いため、免除を利用することをお勧めします。免除は以下の条件に当てはまる場合、2年間のみ利用可能です。
①応用情報技術者試験(AP)に合格
②情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
③情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をとる
おすすめは応用情報じゃな。レベル的にも、
応用情報→ネットワークスペシャリストというのは王道じゃと思うぞ。
午前Ⅰから受験する際は応用情報のテキストを参考にしましょう。午前Ⅱはネットワークスペシャリスト合格教本を使用しておけば問題ありません。具体的な勉強法は後述します。
午前Ⅱは難易度がかなり低いです。試験会場でも時間一杯まで使っている人はあまりおらず、受験者の大半は暇を持て余している印象です。
ワシは暇すぎて字の練習をしていたぞ。
見直しして。
ネットワークスペシャリスト試験を受験するのであれば最低限8割は取れるようになっておきたいところです。
勉強法について
午前Ⅰ
午前Ⅰについてはキタミ式応用情報の教科書がお勧めです。19章立てでかなり長編ですが、1日1章ずつ進める、というように目標を立てて進めると効率的です。
たった30問のために20日もかけるのは得策じゃないね!
そうじゃ。なのでまずは応用情報を取得することをお勧めするぞ。
30問しか出ないため、パラパラと読んで応用情報の過去問を解いた方が効率的かもしれません。
過去問は過去問道場で解くことができます。
午前Ⅱ
午前Ⅱにお勧めの参考書は『ネットワークスペシャリスト合格教本』です。こちらは前半部分に午前Ⅱの対策がびっしりと乗っており、後半には午後Ⅰ・午後Ⅱの過去問と解説が掲載されています。
「午前Ⅱ試験を突破するためだけ」ならこの教科書の内容を暗記するだけで合格点は取れると思います。
ワシはもう7割くらいの知識を忘れたぞ。
意味ないのでは…
暗記する際、「Wordholic」というアプリがお勧めです。自身で単語帳を作成し、忘却曲線に基づいて忘れかけている単語をテストしてくれるいい奴です。
実際にこのアプリを使用して勉強していたが、単語数が1296単語あったぞ。
多いのやら少ないのやら…
午後Ⅰ・午後Ⅱについて
午後試験はかなり難しい
午後Ⅰ・午後Ⅱがこの試験の本番です。午前試験とは比べ物にならないほど難度が高いです。
おさらいしておくと、午後からは午前と違い記述式です。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30~10:20 (50分) | 10:50~11:30 (40分) | 12:30~14:00 (90分) | 14:30~16:30 (120分) |
出題形式 | 多肢選択式 (四肢択一) | 多肢選択式 (四肢択一) | 記述式 | 記述式 |
出題数 解答数 | 出題数:30問 解答数:30問 | 出題数:25問 解答数:25問 | 出題数:3問 解答数:2問 | 出題数:2問 解答数:1問 |
記述と言ってもさまざまな形式があります。
- 「表の空欄に入る語句を解答群から選びなさい」という選択問題
- 「ping監視には「」プロトコルを利用する」のような穴埋め問題(答え:ICMP)
- 「図の形態でシステムを稼働させた際に発生する可能性がある問題を40字以内で述べよ」のような最大70文字程度の論述問題
- 「図2において、ノードAとノードBとの間で障害が発生した場合のリング再構成後の状態を解答欄に示せ」という未完成の図を完成させる問題
どうやって対策すればいいんだ、こんなの…
とにかく数をこなすことが重要じゃ。
午後試験の良いところは、ただ語彙の暗記だけではなく、
「なぜそうする必要があるのか」
「いつ使うのか」などが試験問題として出題されるため、かなり勉強になるぞ。
実際の問題を見てみよう
午前試験は正直暗記だけでなんとかなります。しかし、午後試験になると「単語自体は知っていたが、そうやって使うのは知らなかった」ということが結構な頻度で起こります。特に実務ではあまりネットワークに触れず、教科書だけで勉強している場合に顕著です。
例えば私は「VRRP」という言葉を「ルータの冗長化」「2台のルータに対して設定を行い、仮想的な1台のルータとして使用する」という意味で暗記していました。
午前試験であれば問題ありません。しかし午後試験ではこのVRRPに対してさらに深く問われます。
ルータ 1とルータ 2 の組、及びルータ 3 とルータ4の組には、それぞれ業務系セグメント用と動画系セグメント用の VRRP を設定する。PC 及びルータの設定を適切に行うことによって,業務系セグメント間のデータはルータ 1 とルータ 3 を経由させ,動画系セグメント間のデータはルータ2とルータ4を経由させることができる。
①通常時、業務系セグメントの PC から送信されたパケットを適切な通信経路で中継するためにはルータの VRRP の設定をどのようにすればよいか。50 字以内で具体的に述べよ。
②表1中のa,b に入れる適切な動画データの送信経路を、表1中の表記に従ってそれぞれ答えよ。
H26 秋-NW 午後Ⅰ問1
このように出題されます。これを見て私は「VRRPは2台のルータに複数設定できること」「そもそも仮想ルータと言ってもどちらかの実機上で動くもの」「対向ルータの破損時にはこちらのマスタからこちらのスタンバイへ送信すること」などを初めて知りました。
VRRPアドバタイズメントで優先度をしていることは暗記していましたが、それをここで使うことなども試験を解いて初めて知りました。
このように、午前試験で暗記したものをいつ使うのか、どのように使うのかが問われるのが午後試験です。そのため、実務であまり携われない方は午後試験を解くことで対策・勉強になります。
特にVRRP、BGPなどは参考書を読むよりも午後試験を解いた方がかなり勉強になります。
ちなみに①の答えとしては、「業務系セグメントの仮想ルータがルータ3でアクティブになるようにプライオリティ値を設定する。」です。仮想ルータと言ってもどちらかの実機上で動き、仮想ルータが動作するルータのことをアクティブと呼んでいるんですね。
②の答えは、
a:ルータ1→ルータ3
b:ルータ2→ルータ1→ルータ3 です。いきなりスタンバイであるルータ1から送信するのではなく、一度マスタのルータ2から送信を試行するのですね。
午前の知識を定着させるために午後試験を解く、
というのが理想的な流れなんだね。
そうじゃな。「なぜ使うのか?」がわかるともっと楽しくなるぞ。
午後Ⅰと午後Ⅱの違いは?
午前と午後でだいぶ難易度に差があることはわかったよ。
でも、午後Ⅰと午後Ⅱは何が違うの?
午後Ⅰは2問を90分で解くので、時間との勝負じゃ。
午後Ⅱは1問を120分で解くため、集中力との勝負じゃな。
難易度的には大差ない気がするぞ。
午後Ⅰ
午後Ⅰは3問から2問を選択し、90分で解かなくてはなりません。大体1問あたり45分で解かないといけないため、かなり時間に追われます。その分問題は易しい…わけもありません。もりもり論述問題が出ます。ただ、問題数自体は少なく、穴埋め5問を入れて12問程度です。
そのうち○字以内で述べよ、という論述はは3〜4問ほど。合格点が60点のため、1問30点取れれば合格。論述は基本的に6〜8点程度なので全ての論述を完答できればだいぶ合格に近づきます。
逆に2問わからない問題があるとかなり厳しいです。
論述問題に時間をかけすぎると次の問題に使える時間、見直しの時間がどんどん減っていきます。ただ、わからなかった論述が頭の片隅にずっと残り後の問題に影響が出てしまう…午後Ⅰは過酷な試験です。
わからない問題は一度後回しにする他ないのじゃ。
いくら考えても知らない問題は解けないのじゃ。
3問から2問を選ぶんだよね。どうやって選べばいいの?
問題数とか?
午後Ⅰの選び方
応用情報とは違い、「ルーティング」「ネットワーク機器」のようにカテゴリー分けされているわけではありません。基本的には問題文を読まないと何が問われているかわかりません。
一応問題文の最初に、「遠隔地バックアップに関する…」「シングルサインオンに関する…」のようにそれっぽいことが書いてあるため、冒頭部分で判断することも可能です。
まず設問に目を通してみて、論述が解けそうだったらその問題にチャレンジする、というのもお勧めです。かくいう私も解きながら落ちることを悟り、途中で問題を変えました。
午後Ⅱ
午後Ⅱは2問から1問を選び、120分で解答する方式です。特徴として、問題文がめちゃめちゃ長いです。A4で10〜15ページほどあり、センター試験の国語以上に長いです。
一大スペクタクルだね。
問題文を読むだけで本当にしんどいのじゃ。
過去問の際は答え合わせもあるから本当にしんどいぞ。
また、問題数も20問程度あり半分が論述問題です。
しかし、難易度は午後Ⅰと大して変わらず、「圧倒的に難しい!」ということはありません。午後Ⅰがただ長くなっただけ、という感じです。論述が多いので気が滅入りがちですが、聞かれていることは特に難しいことではありません。
むしろ午後Ⅰとは違い、時間にかなり余裕があるのでこちらの方が楽に感じる方もいるかもしれません。私はどちらも嫌いです。
午後Ⅱの選び方は?
もうここまで来たら直感でいいでしょう。私は毎回1問目を選択していました。どうせ大して変わりません。
適当すぎない?
全くわからなければ変えた方がいいとは思うぞ。
具体的な勉強方法
午後Ⅰ・午後Ⅱにかかわらず、とにかく過去問を解きましょう。また、一度解いた問題を明日・明後日もう一度解いてみることが非常に大切です。
答えを暗記するのではなく、「ここはこうだからこうなる」というように理由づけして答えられるとよいでしょう。
例えば以下のような問題があったとしましょう。
Q.IPSecのトンネルモードを使用するとどんな弊害があるか?
答えとしては、「MTUを超える可能性があり、ルータでパケットの分割・再構成が行われスループットが低下するおそれがある」という旨を解答すればよさそうです。
この解答を暗記してもあまり意味がありません。ここで大切なのはその解答を導き出すために必要な知識です。例を挙げるとするとこんな感じです。
- なぜトンネルモードを利用するとMTUを越えるのか?
- そもそもトンネルモードとトランスポートモードは何が違うのか?
- そもそもMTUとは何か?MSSとはどう違うのか?
- なぜMTUを超えると遅くなるのか?パケットの分割とは何か?
- なぜトランスポートモードではなくトンネルモードを利用したのか?
- IPSecパケットのパケット構成はどうなっているのか?
その設問に対し、解答を導き出すための土台があれば別の問題でも活用できます。例えば、「なぜIPSecはポート変換をできないのか?」などが問われても、IPSecをよく理解していれば「ESPによってポート番号が暗号化されてしまうから」と回答できます。
IPSecも午後試験で問われやすいが勉強しづらい、という代表的なトピックです。ぜひ過去問を利用して理解を深めましょう。なお、ここについてはH27 午後Ⅱ問2にて取り上げられています。
まとめ
- ネットワークスペシャリストは難しい
- 午前試験は大して対策する必要がない
- 午後試験は過去問を利用して対策をするのが効果的
- 同じ問題を別日に解き、「なぜそうなるのか」を重視して解答する
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